2023/09/28 パン

「地粉」ってなに? 『白崎茶会のはじめての地粉パン』より

皆さんは、地粉のパンを食べたことがありますか?

そもそも「地粉(じごな)ってなんだろう?」と思った人も多いかもしれません。

地粉とは、にっぽんの小麦粉です。
「うどん粉」とも呼ばれ、昔は家庭で使われる小麦粉はすべて地粉でした。
ほうとう、おやき、すいとん、まんじゅう、天ぷら、蒸しパンなどなど、ひとつの粉でなんでもつくっていたのです。
地粉でつくるとどんなものも、しっとりモチモチに仕上がります。
日本のお米が外国のお米と比べてモチモチしているのと同じように、日本の小麦も、モチモチしているのです。

私たち日本人は、モチモチした粉ものが大好きですよね?
今も、コンビニやスーパーなど、どこへ行っても、ふわもち〇〇パンとか、もっちり〇〇ロールなど、モチモチの名前がついた商品が並んでいます。
ただし、原材料を見てみると、その多くは小麦粉に、いろいろなモチモチ素材(加工でんぷん、増粘剤などなど)が加えてあるようです。

今の日本の小麦自給率は15%前後といわれているので、私たちが食べている粉ものは、そのほとんどが外国産小麦でつくられていることになりますが、外国産小麦でみんなの大好きな「しっとりモチモチ」の食感をつくるには、さまざまな工夫が必要なのかもしれません。

もしかして私たちは「地粉ロス」なのかも? なんて考えも浮かびます。
長い間、主食として食べ続けてきた地粉をほとんど食べなくなり、突然、外国産の小麦粉を何種類も食べはじめたのですから、ロスになってもしかたないような気がするのです。

新しい小麦粉が体に合わない人もたくさん出てきて、小麦粉自体を避けなくてはならなくなった人も増えています。
モチモチのドーナツが好きなのも、タピオカに並んでしまうのも、体が地粉のモチモチを求めているからなのかも??……と、ここまでは、私の個人的な意見や空想も含まれていますが。

とにもかくにも、本書は「地粉でつくるパンの入門書」です。
モチモチの食感はそのままに、初心者でもつくりやすく、生地がふんわりと軽く仕上がるように、いろいろな工夫をしています。

地粉でパンをつくると最初は戸惑うかもしれません。
一般的な強力粉のパンほど大きくふくらみませんし、生地もやわやわで、頼りなく感じるでしょう。
粉によってそれぞれ吸水率も違いますし、味や香り、色さえ違います。
ですが、たとえどんなに不格好になろうとも、焼き上がったパンはうまみと風味にあふれ、シンプルな材料で奥深い味になります。
私たちの祖先が食べ続けてきた、懐かしい味わいです。
ひとりでも多くの人に、このおいしさを知ってほしいと願ってこの本をつくりました。
地粉は今も全国各地で栽培されています。
お米と同じように、人それぞれ好みの地粉があり、不思議と、生まれ育った場所に近いところで収穫された粉を、おいしく感じるようです。
今こそ、にっぽんの小麦粉でパンを焼いてみませんか?

『白崎茶会のはじめての地粉パン』「はじめに」より(NHK出版デジタルマガジンより)

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白崎裕子
料理研究家。東京生まれ、埼玉育ち。神奈川県・逗子にある自然食品店「陰陽洞」が主宰する料理教室の講師を経て、神奈川県・葉山の海辺に建つ古民家
でオーガニック料理教室「白崎茶会」を始める。植物性の材料でもおいしく満足できる料理・菓子・パンが評判となり、多くの参加者が全国各地から集まる人気教室となる。現在、オンライン料理講座「白崎茶会レシピ研究室」主宰している。
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