2023/01/10

「素材の味を大切に」野﨑洋光さん

野﨑洋光さん スペシャルインタビュー#03

15周年スペシャルインタビュー企画。第3回は、日本料理店総料理長 野﨑洋光さん(以下=野﨑)のスペシャルインタビューをお届けします。

飽きない料理は家庭料理

野﨑さんはこの15年で「料理に関して変化した」と思われることはありますか?

野﨑外食などでみなさんの舌が肥えましたね。でも、コロナがあって家ご飯が増えて、できあいの物も食べ飽きてしまって。結局、手づくりがいい、極端に言えばシンプルに白いご飯とみそ汁があればいい、という人が増えているのではないでしょうか。

今は、素材が新鮮でおいしいので、家庭料理はシンプルでいいんです。つくりたてのおいしさがあれば、無理してお店の味やプロの技術を真似しなくても、十分だと思います。
私も、家では妻の料理で満足です。ちゃぶ台をひっくり返したことは一度もありませんよ。(笑)

素材の味を感じることが大事

野﨑さんが料理で大切にしていることは何ですか?

野﨑素材の味を感じることをいちばん大事にしています。私の店では、炊き込みご飯には、だしを使っていません。だしを使うと、素材の味が負けてしまいますので。

素材の味がすることがいちばん飽きが来ない。うますぎない、口離れの良い、すっきりした料理。手抜きじゃなく、素材をどのようにおいしく食べるか、飽きない料理をつくりたいです。

それから、古い常識にとらわれない、次のステージを求めることが大切だと思っています。
たとえば、たけのこのアク抜きには米ぬかでゆでるというのが常識でしたが、「ためしてガッテン」に出演した際に、大根おろしの汁につけてアクを抜くことを実験したことがあります。アクが抜けるのは酵素の働きなので、大根おろしでもアクが抜けるんですね。
おいしさにも理由があり、それを明らかにして料理を追求していきたいです。

野﨑洋光さんの人気レシピ「ぶりの照り焼き」

「みんなのきょうの料理」で特に人気がある野﨑さんのレシピは、「ぶりの照り焼き」です。和食でずっとナンバーワンの人気を博しています。その秘密はなんでしょうか?

野﨑プロなら串を刺して直火で焼くなど、手間をかけますが、家庭ならその手間を省いて、フライパンでおいしくできるレシピだからだと思います。
そして、このレシピでは、ぶりに塩を振って、余分な水分が抜け、味が入っていく「味の道」をつけています。それまでは、照り焼きに塩をするということは、なかったと思います。
「味の道」をつけることで生臭みや余分な水分が出て、ぶりのうまみが凝縮し、たれの味ものりやすくなる。料理には、必ずおいしくなる理由があるんです。

ぶりの照り焼き
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今後の展望は?

野﨑私は、30年前「家庭料理に原点がある」と本に書いたのですが、家庭料理にこそ知恵が詰まっていると思っています。
そして家庭料理は【シンプルでよく、難しくない】、そんな良さをみなさんに伝えていきたいと思い、日本各地を回っています。
例えば、かつおや昆布で本格的なだしをとらなくても、煮干しを水から煮出すだけでよいです。また、干ししいたけを戻すときは、つけた水を一度捨てると雑味のないすっきりとした味になります。そんな昔の知恵も伝えながら、トマトジュースや豆乳などもだし代わりになることも伝えたいです。

そして、うまいものをつくるだけではなくて、安全安心、健康というテーマが料理人に課せられた義務だと思っています。
今後も、安全安心な家庭料理のおいしさや魅力を伝えていきたいと思っています。

野﨑
みなさんへメッセージを

野﨑「料理をつくらなくては」と義務のように感じている方も多いと思います。
料理をシンプルに考えたら、ご飯と具だくさんのみそ汁があれば、十分です。
ご飯をおいしく食べるには、炊き上がったら、かき混ぜて、スイッチをきる。
食べるときに電子レンジにかければ炊き立てご飯になりますよ。器がレンジで熱くなっていると興ざめなので、お茶碗に盛り替えればOK。
そして、みそ汁は、だしを使わず水でいい。だしの代わりになる、わかめや油揚げなどを入れればいいんです。

それから、料理を楽しくするには、季節の食材や行事を覚えておくとよいと思います。冬至だからかぼちゃを食べようとか、春だから木の芽を使おうなど。テーマがあると一緒に食べる人と会話が生まれて、言葉のキャッチボールが楽しめます。
料理をしていて1番うれしいのは、「おいしいね」という言葉をもらうこと。会話の中で「おいしいね」ということばが出れば、料理はもっと楽しくなりますね。

野﨑洋光さん、これからも素材の味を生かしたおいしい料理を楽しみにしています。
ありがとうございました。

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