2011年11月29日 (火)
キッチンリポート番外編 辰巳芳子さんが求める本物の道具とは?
今回は、NHK「きょうの料理」講師としてもおなじみの料理研究家の辰巳芳子さんに、調理に欠かせない道具の数々についてご紹介いただきます。
「台所そのものが道具です。だからまずは台所の『動線』を創出することが大切。その次に大切なのが『手』です。道具は、人が本当の意味で進化できる、本物を使わなければなりません」

料理家、随筆家として日本の食に提言を続ける辰巳芳子さん。広い視野と洞察力は、もの選びにも息づいています。
たとえば大きな長方形のほうろうの器。実は冷蔵庫の一部で、バターやチーズの専用室をはずして使っています。
「思いこみを捨てなくちゃ。鍋は丸いと思っていたら大間違い」

良い道具がない時には自分で考案してしまうことも。ミモザ色が美しいほうろうの蒸気調理鍋もそのひとつ。医食同源的な「しいたけスープ」をつくるために、大きさ、材質、形状、小物にこだわりました。
そんな辰巳さんが、子どもの頃から改良したいと思い続けてきた道具があります。
「ごますりを手伝わされるたびに、なんともいえない不合理を感じてきました。すり鉢とすりこ木の接点はわずか1センチ。貴重な時間を奪っていくのね」なんとかしたいという思いを現実にしたのは、大分の小鹿田(おんた)焼との出会いでした。

「絵付けをせず、ひっかいて模様をつくる。このつくり手さんたちはひっかきたくて仕方ない(笑)。だから、すり鉢を自由闊達につくるに違いない、と」
出来上がってきた試作品の「すり足」の見事なこと! では、すりこ木は誰につくってもらうか。
「最初、椅子屋さんに頼んだら、かわいくなかった(笑)。そこで、山形のこけし屋さんに持っていったの。大成功(笑)」
大分と山形の見事なコラボレーションは、合理性と美しさでロングセラーに。
「こけし職人さんを数年後に訪ねたらすっかり顔色がよくなられて。小鹿田焼の方は民芸大賞をおとりになった。人とものは互いに支え合う。ものより人が上などと思ってはいけません」
80年以上、ものと正面からつき合ってきた人のみが言える言葉です。

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