今年も残りひと月余りとなりました。景色も日に日に晩秋色(紅葉)に染まっています。
今月の関西食探訪はワインの話題です。現在も生産をしている日本最古のワイナリーが大阪にあることご存じですか?大正3年創業のカタシモワイナリーです。大阪府と奈良県の県境のぶどうの産地、柏原市にあります。
このワイナリーへの片思いが始まったのは一年ほど前。大阪市内のワインダイニングでカタシモワイナリーのワインを飲んで以来です。一回目は「合名山」という大阪産シャルドネで作った白ワインを頂きました。うまく言えませんが、作り手の本気度が伝わってくる計算された緻密なお味でした。二回目は大阪で生産されるぶどうの主力品種"デラウエア"を使った「たこシャン」というスパークリングワイン!"大阪名物たこ焼きに合うシャンパン(たこ+シャン)"という意味だそうですが、大阪らしい遊び心の裏に、大阪のデラウェアをPRしたいという思いが込められていると聞き、とても印象に残りました。
そしてようやく11月上旬!念願が叶い、カタシモワイナリーのツアーに参加させて頂けることになりました。近鉄大阪線の安堂駅で下車し、ブドウ畑が広がる斜面に向かって歩くこと10分弱。カタシモワイナリーの集合場所には10数名の参加者がいらっしゃいました。案内役は4代目社長の高井利洋さんです。
ツアーは柏原市のぶどうやワイナリーの歴史のオリエンテーションから始まり、その後ブドウ畑を1時間余り案内して下さいました。
高井さんの所では現在2.5ヘクタールの広さの畑で11種類のぶどうを栽培しているそうです(ワイン&食用)。ブドウ畑の第一印象は広い!そして急斜面!斜面の上からブドウ棚を見下ろすとその先に柏原市の町中が見えます。大阪にこんな美しい風景があったとは!急斜面だからこそ、日当たりも水はけも良くぶどうの栽培にむいているのですね。
個人的に気に入ったのは、ブドウ棚の下から上を見上げた景色。ぶどうの葉と葉の間から青空が見え、優しい日差しが降り注いできます!
柏原のぶどうの一番の特徴は、ぶどうの木が古いことだそうです。樹齢20~40年の木が沢山あり、中には95年のものもありました!(35年以上で古木だそうですから95年はかなりお婆ちゃん!)
ぶどうの木は、若い内は枝を伸ばしたり葉を増やしたり"大きくなるために"養分を使いますが、ある程度成長すると今度は"子孫を残すために"養分を使うので、風味が深く凝縮した、味の濃いぶどうが出来るそうです。100年続いてきた畑だからこそできる、"歴史"が育むぶどうなんですね。ところが今、柏原でも高齢化や後継者不足で畑作りをやめる農家が相次いでいます。高井さんは、そんな畑がマンションや駐車場に変わるのを防ぎ歴史ある故郷の風景を守りたいと、耕作放棄されたぶどう畑を譲り受けてボランティアと共に栽培を続ける活動もなさっています。たこシャンも、柏原のぶどうを多くの人に知ってもらって、ブドウ畑のを守りたい!そんな思いで生まれたそうです。
さて、急な斜面を降りてワイナリーに戻ると、1万本のワインを貯蔵しているセラーを拝見。中はやはりヒンヤリ。90年余の歴史あるセラーは、壁や床に炭を詰めて10度くらいに保っているそうです(有形文化財)。電気が無かった頃は、温度が一定だった井戸水を循環させていたようです。
そしてツアーの最後はテイスティング(試飲)。デラウエアで作ったスパークリングワインや、35年の古木の堅下甲州で作った白ワイン、昭和初期の日本酒の作り方で作った貴重な赤ワイン(メルローとマスカットベリーA)など数種類を頂きました。普段私達はワインを買っては、「美味しい」とか「好みじゃない」などと評価していますが、作り手がどんな思いで作っているか、その情熱を知ることができたこの日は、一本一本のワインに込められたドラマに思いを馳せることができ、どのワインのお味にも特別な感動を覚えました。
山本美希
やまもとみき