今月の関西食探訪は少し変わった“食材”の話です。どんな食材かというと、煎茶などに加工される前の「お茶の若葉」です。えっ?茶葉を食べるの~?はい、そうです。
5月の中頃、親しい製茶業のご主人、谷口郁男さんからメールがありました。宇治茶の産地として知られる京都府南部の宇治田原町では、5月半ばから新茶の摘み取りと加工の季節になりますが、そんな中で“「食べる茶葉」が話題になっている”というのです。
茶葉の出荷をしているのは「障害福祉サービスセンターうじたわら」。入所している方達の作業として茶葉の摘み取りを行っています。2年前からその生茶葉を本格的に出荷し始めたところ評判が広がり、京都の料亭やホテル、東京の築地市場からも注文がくるほど人気になってきたそうです。これは作業所の皆さんが手で丁寧に摘み取りをしている成果です。機械で摘むと固い枝も混じりますが、施設では、一つの芯に2つの葉がつく「一芯二葉」とよばれる伝統的な摘み方で、きれいで柔らかい新芽だけを丁寧に摘み取っています。
茶葉は天ぷらに使われることが多いそうですが、谷口さんから「京の自慢食材としてもっといろんな料理に使ってもらえたらなあ」と相談がありました。そこで!信頼できる仲良しシェフ達にお送りしてみました。するとさっそく色んなアイディアを出して下さいましたよ(嬉)。
そのお一人、京都のイタリアン「イルギオット-ネ」の笹島保弘さんのお店に伺いました。写真をご覧下さい。茶葉をパスタに練り込んだ“冷製茶パスタ”と、バジルソースならぬ“茶葉ソース”のパスタ。さすが笹島さん。茶葉の香りとほろ苦さや旨味が絶妙に生かされていて、と~っても美味しかったです!その後、シンガポールからのお客様にも、京の食材として茶葉イタリアンを出して下さったそうです。
また7月に入ると、同じく茶葉をお渡ししていた「京都ブライトンホテル」の料理長、滝本将博さんからも茶葉の再注文が来ました。蒸した白身魚のソースに茶葉を使いたいとのこと。一番茶の摘み取りは6月半ばで終わりましたが、7月はちょうど二番茶の摘み取りの季節。ナイスタイミングでした!そのうちお店にお邪魔して茶葉フレンチを楽しみたいと思いま~す。
それにしても、さすがアイディアと京食材への愛情たっぷりの京都のシェフの皆さん。感謝感激と共に大変学ばせて頂きました。「茶葉=飲むもの」という概念をとっぱらうと、青じそやルッコラやハーブのように、香りや味を楽しむ食材としての可能性が広がるのですね。
製茶業の谷口さんには、その後、茶葉を煎茶に加工する宇治田原町の工場の見学にも連れていって頂きました。近づいただけでお茶の清々しい香が漂ってくる工場。中に入ると、茶葉を蒸して旨味を引きだし、揉む作業や乾燥の作業を何段階にも分けて慎重に丁寧に行っています。
100キロの茶葉からわずか20キロの煎茶しかできないそうです。工場のご主人の下岡さんはこの道50年のベテランですが、今でも毎回“難しい”と感じるそうです。
確かに、茶葉によって蒸気の量を調節したり揉み具合を変えたり。それはそれは繊細な作業だと感じました。その分「情熱と愛情と誇りを持ち続けられる仕事です!」と、すてきな笑顔で答えて下さいました。
飲むお茶も食べるお茶も素晴らしいなあ~。緑茶の国の人として、誇らしく嬉しくなりました。
山本美希
やまもとみき