今月の「関西の食体験」は歴史ロマンにひたりましたぁ~!
時代に埋もれていた葡萄園でワイン造りを復活させようと活動している方達がいらっしゃると聞き、9月上旬、兵庫県稲美町(神戸市から西に40キロ程)に行ってきました。
ここには1880年、明治政府が国家プロジェクトとして開いた日本最古級の国営ワイナリー「播州葡萄園」がありました。病害虫や台風等に苦しみ僅か20年程で閉園されたため、長年「幻の葡萄園」でしたが、10年程前に発掘。2006年に国史跡に指定されたのです。
町の方に案内して頂いたのは、広い台地に広がる美しいブドウ畑。
ぶどうの木は現在約2000本。品種は当時も栽培していたカベルネソーヴィニヨン、メルロー、ブラックジンファンデルなど5種。長い日照時間と雨の少ない稲美の気候は上質のぶどう作りに適しているとか。当時多い時は60品種19万本以上のぶどうが栽培され1トン以上のワインが生産されたそうです。見渡す限りの葡萄畑だったのですね。
現在、葡萄園の復活に情熱を注いているお一人が農学博士の佐藤立夫さん。この活動のリーダー的存在です。2003年に初めてぶどうを植えてからは、苦労と戸惑いの連続だったそうです。病害虫の被害や、西欧では考えられない早さで伸びる雑草取りや枝の剪定作業。でもやっと3年目の2005年に、収穫したブドウでワインが少しだけ出来ました。しかも足で踏んで絞るという昔ながらの方法で!そして去年は100リットル程できるようになり、とうとう製造免許を取得。まだ満足できる味でないため販売はしていませんが、聞いているだけでジーンときました!130年前と同じ場所で、同じぶどうを作り、同じ製法でワインを作る!歴史が今に生き返ったのですから!ブラボー!
さて、明治当時のワイナリーはどんな姿だったのでしょう?
ワインの醸造場や、かまど、ガラス温室の遺構が見つかった場所にも連れて行って頂きました。すると・・・あれ?何もない。そこは草の生えた広い空き地です。発掘調査後は土地を元に戻したのだそうです。でも町の郷土資料館には、発見された遺構や遺物はちゃんと記録・保存されていました!
写真をご覧下さい。醸造場はレンガが使われた建物だったのですね。
ワインボトルもたくさん出土しました。
中には液体の入ったボトルも!成分分析の結果、ワインの成分が含まれていたそうです。
当時、明治政府は欧米列強諸国の産業を次々に導入し、国内産業を盛んにしようとしました。その一環で稲美に開かれたのが、フランスのワイン製造業を導入するための実験施設、播州葡萄園です。近代国家をめざし歩み出した明治の日本。葡萄園の人達はどんな新しい夢を見ながら働いていたのでしょう。帰りの電車の中、車窓に夕空の瀬戸内を見ながら、心はすっかり明治の大変革時代にタイムスリップしていました。
今や全国各地で作られブームになっている国産ワイン。幻の葡萄園の復活は、日本のワイン作りの歩みだけでなく、当時の夢や空気まで私達に伝えてくれるような気がしました。
今ごろぶどうの収穫は全て終わっていることでしょう。今年はワイン樽が一つ一杯になる位(約200リットル)ワインができるといいなと、佐藤さんはおっしゃっていました。いつか、明治に思いを馳せながら稲美のワインで乾杯できる日がくるかもしれませんね!
山本美希
やまもとみき