ここ最近、東京は涼しくなってきました。夏から秋へ、季節の移ろいを感じます。実は私、今年は「夏の寒さ」を感じてきました。訪れたのは、ロシアのモスクワとサンクトペテルブルク。ロシアというと、それほど遠くないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。でも、モスクワやサンクトペテルブルクは、広大なロシアの中でも西にあります。日本の成田からモスクワまで、飛行機で10時間くらいかかるのです。夏のおよそ50日間が白夜。夜遅くまで明るく、家族連れが散歩をしていました。
ロシアは以前から訪ねたかった場所でした。西欧やアメリカとは違う国の雰囲気や食べ物、芸術を体感したかったからです。ロシアはどちらかというと薄暗いイメージがあったのですが、違いました。歴史ある宮殿や聖堂がとにかく豪華!おしゃれなレストランも多く、食べ物もおいしかったです。私が出会った料理の数々、リポートします。
まずは「ボルシチ」。おふくろの味、ロシアの最も代表的な料理といえるかもしれません。赤いスープ。何の色だと思いますか?答えは、寒冷な土地でもとれるビーツという野菜。赤く、カブのような形をしています。その他、ジャガイモもたっぷり。じっくり煮込んであって、体が温まりました。白い色をしているのは、「スメタナ」というロシア料理に欠かせない食材。サワークリームに似ています。牛乳から作った生クリームに乳酸菌を加えて発酵させたもので、ほのかな酸味が効いていました。スメタナはロシアの家庭には必ず置いてあり、様々な料理にかけて食べるそうです。
最もおいしかったのがこちら。壺で焼く「壺焼き」。壺のふたになっているのはパイ。中には、野菜や肉たっぷりのシチュー。野菜や肉からうまみが出ていて、ほっとするような味でした。パイとシチューをスプーンで一緒に食べたり、パイをちぎってシチューにつけて食べたり。後で調べてみると、パイのふたを全部とってシチューにつけて食べるのが、正しい食べ方だそうです。この料理も、寒いロシアならではですよね。
最後はデザート、アップルパイ。ロシアのレストランやスーパーで一番よく見かけた果物は、リンゴでした。日本のような赤くずっしりした物ではなく、黄色や青みがかった小さなリンゴがほとんとです。寒いロシアは果物が豊富ではないので、多少傷んだリンゴでも皮ごと食べることが多いそうです。リンゴそのものは多少酸っぱかったのですが、その酸っぱさが、アップルパイでは活かされていました。パイやクリームの甘さとリンゴの酸味とのバランスが絶妙でした。
ロシアというと、広大で寒冷な土地。限られた作物から、いかに温かくおいしい料理を作るか。ロシアの人は知恵を働かせてきたのでしょう。生鮮食品が手に入りづらいので乳酸発酵させたり、厳しい寒さに耐えるために煮込み料理を多くしたり。ロシアの食から、生活の知恵を伺い知ることができました。
江崎史恵
えざきしえ