今月の関西の食体験は、大阪の食の台所「黒門市場」です。
高級料理店から庶民の暮らしまで、大阪の食卓を支えている黒門市場。鮮魚店や青果店など、約160件の商店が軒をつらね、全国各地のイイ食材が揃う「食」の宝庫です。
今回は、黒門市場・常務理事の髭野定芳さんを訪ねました。髭野さんは、主に業務用の鮮魚を扱う商店(髭定)の4代目ご主人です。スマイルがすてきな髭野さん。お魚を納入している飲食店などに時々食べに行っては、お客さんの反応に耳を傾けるそうです。「おいしい!」って言葉が飛びだすとスマイルは全開に!毎日夜明け前からのハードな仕事ですが、お客さんの喜ぶ顔を見ると、ますますいい品を揃えたいと気合が入るそうです。
さて、関西の夏の魚の代表といえば「はも」。主に西日本以南でとれる魚で、関西の人々にとっては身近な夏の風物詩です。東京では料亭で出される高級食材というイメージが強いかもしれませんが、関西では、料亭などの料理店の他、スーパーなどでも広く販売されます。家庭の食卓にものぼります。消費量は関東の10倍とも言われています。
そのハモに、髭野さんのお店でじっくりお目にかかりました。食べた時の優しい味わいからイメージする上品さとは違って、お姿はなかなか強面です。口が目の後までさけた細長い顔で、顎には鋭いギザギザの歯が並んでいます。生命力が強く、扱いを注意しないと噛みつかれて、指に穴があくそうです。しかも、ハモは硬い小骨が多いため、そのままでは食べられません。“骨切り”という下処理が必要です。その骨切りを、この道35年の職人さん南豊さんに見せて頂きました。
南さんは、ハモを腹側から開いたあと、専用の包丁で細かい切りこみを入れて小骨を切断していきます。すごい技でした!まず切り込みの細かいこと!0・3~0.5ミリ間隔位で切っていきます。しかもスピードはさすがベテラン。シャキシャキと切っていくリズミカルな音が止まることはありません。さらに!皮は切れていません!身だけ見事に切られていて、まさに薄皮一枚で繋がっています。絶妙な力の入れ方と集中力です。
関西では、京料理を中心に骨切りの技術が発達したからこそハモを食べる習慣が根付いたのだと話してくれました。一人前に骨切りができるようになるには、最低2年はかかるそうです。
さて、骨切りしたハモ。最も一般的な食べ方は、さっと湯通しして梅肉とたべる湯引きです。ハモの身と脂の上品な旨味が、梅肉の香と酸味で清々しい夏の一品になります。また美味しい出汁はお吸い物にしても最高。私はハモのお吸い物に必ずテンションが上がります(笑)。大阪らしいハモの食べ方はハモ寿司。照り焼きにして箱寿司にしたものです。
最後に、長年鮮魚店を営んできた髭野さんに、今一番思うことを伺いました。最近、家で魚をさばけない、料理できない人が増えていることが寂しいそうです。肉食が増え、魚離れなどと言われますが、髭野さんは、お魚のことを教えに小学校なども回っているそうです。魚料理は米と共に、海に囲まれた日本の食文化。ヘルシー志向が進む欧米では魚や日本食ブームがおきているのに、おひざ元の日本はピンチです。その素晴らしさもう一度見直し、誇りをもって未来へ伝えていってほしいと願っていらっしゃいました。
山本美希
やまもとみき