毎月、関西の食体験をお伝えしている山本美希のブログ。今月は、兵庫県明石市のタコです!明石は神戸市の西に位置する瀬戸内海に面した町で、今が旬のマダコは水揚げ日本一だそうです。この町の、色気ならぬ“タコっ気”は、明石駅に降りた時からムンムンです。まず改札機にいきなりタコ!町なかの看板もタコのモチーフが一杯!さらに明石焼(卵とダシ汁でふんわり焼き上げた柔らかいタコ焼き的料理)やタコ飯、タコのコロッケのお店など、あちらこちらでタコ料理が迎えてくれます。
そんなタコの町ですから、やっぱりいました!タコを知り尽くしたタコ博士!小谷泰朗さん。老舗料理旅館(人丸花壇)の二代目主人です。並々ならぬ愛情と情熱でタコを研究し、タコの事なら何でも知っているという小谷さんにお会いしたくて訪ねました。実は小谷さん、約30年前に、あるアイディアで明石のタコを一躍有名にしました。今では明石の代表的グルメになっている“タコ尽くし会席”。これを初めて考案し旅館で出したのです。これが大反響をよび、全国のタコ好きが明石にきてタコに舌鼓をうつように。それまで明石というと鯛の方が有名で、タコは脇役的な存在だったそうです。美味しいタコも町の主役に昇格させたいと知恵をしぼった結果がタコ尽くし会席だったそうです。
そこで!私も頂きました、タコ尽くし会席。タコのぶつ切り、うす造り、もろみ和え、煮物、天ぷら、石焼、しゃぶしゃぶ、椀物、酢の物、ご飯物など14皿のタコ料理です。切り方、調理法、味付けなど繊細な工夫の積み重ねで、味や食感がどれも違い、明石のタコの魅力を堪能できました。ぷりぷりと身が締って歯ごたえのいいこと!そして噛むほど甘みと旨みが出てくる味の濃さに驚きました。明石のタコが美味しい理由はまず餌だそうです。明石海峡は、タコが好きな小さなカニやエビの宝庫。それを食べているから美味しいのだそうです。また明石海峡は流れが早く、タコは岩場などにしがみついて暮らしています。そのため身が締まって歯ごたえが抜群になるとか。美味しさの秘密はエサと潮流にあったのですね。
滅多に食べられない珍しいものも頂きました。お椀の写真に写っている白いブツブツの細長いもの。マダコが産みつけた卵です。海中では藤の花房が垂れ下がっているように見えるので「海藤花」と呼ばれます。綺麗な響きですねえ。でも小谷さんによると、この卵、もともとは繋がっていないそうです。マダコが、バラバラの卵を足で繋ぐのだそうです。しかも約1ヶ月間、飲まず食わずで卵を外敵から守り、孵化する頃に力尽きて死んでしまいます。マダコの寿命は1年くらいだとか。イメージと違って(ごめんなさい!)、とてもケナゲな生き物なんですね。
その他、タコは大根でたたくと繊維が程よく柔らかくなるとか、タコはもともと貝だったとか、タコ博士の面白い話は尽きません!気づいたらあっという間に3時間が過ぎていました。そして私の心はジーンとなりました。なぜなら、自慢のタコについて熱く誇らしげに語る小谷さんの姿に、地元への温かい思いがひしひし伝わってきたからです。故郷への愛情が、タコを明石のスターに押し上げたのですね。
それではまた来月!お元気でお過ごしください。
山本美希
やまもとみき