「地元の味をいただきます」、今月のテーマは「ぎんなん」。生産量日本一を誇る愛知県稲沢市へおじゃましました。ゲストの中国料理店総料理長、中川優さんとさっそくぎんなんが栽培されている畑へ。出迎えてくれたのは稲沢市のマスコット・キャラクター「いなッピー」。全体にぎんなんの種のような雰囲気ですが、チャームポイントははちまきとふんどしです。地元の国府宮神社で毎年冬に行われる「はだか祭」に参加する男性のスタイルをイメージしています。私は高校時代、岐阜市から名古屋市に電車で通学していましたから、その途中にある稲沢市には親しみを持っていました。「はだか祭」の日は電車が超満員になったことを覚えています。
ぎんなん農家の森さんの畑で見たイチョウの木は、街路樹でなじみのイチョウの木とはなんだか違うもののようでした。枝によく光が当たり確実に実がなるように接木しているから、不思議なかたちの枝振りになっているんですね。稲沢市は、松などの植木や苗木の栽培でも有名なので接木の技術があるのでしょう。それから気をつけて町の景色を眺めるといたるところにイチョウの木が大きく枝を広げていることがわかりました。
木の下から仰ぎ見ると、丸々とした無数の実がたわわに生っていました。その重みで枝がしなっています。森さんは脚立にのぼり、長い棒で枝を揺さぶりぎんなんの実を落としていました。ポトポトと面白いように実が降ってきます。「かぶれるから素手でさわらない方がいいよ」と言われて、そうだった、街路樹のイチョウから落ちた実を拾うときは手袋をしなさいと注意されたことがあった。「うちの家内が嫁にきたころは、生っている木に近づくだけでかぶれたもんだよ」とのことです。
ところで気がついたのですが、私がかつて実を拾ったのはイチョウの葉が黄色になって実も熟していました。ところが地元では葉も実も緑色の状態で収穫しているのです。旬は9月中旬から10月。緑色の実のなかの殻を割ったものは翡翠色で、それが市場で価値が高いのだそうです。中川総料理長も「確かに築地でも翡翠色のぎんなんが高級とされてますね。香りがいいんですよ」とのこと。そこへ森さんの奥さんがぎんなんの素揚げを持ってきてくれました。なるほど、モチっとした食感の次の瞬間、濃厚な秋の香りを感じました。
後藤 繁榮
ごとうしげよし