自宅の近所にフレッシュひろきと呼ばれる八百屋さんがあります。駅からの帰り道にときどき寄っては、店のご主人とおしゃべりするのが楽しみです。商店街にある店で売るだけでなくレストランなどにも配達している関係でタウン情報に詳しいのです。どこそこに新しい店ができたよと教えてもらい行ってみたりします。「おいしかったよ」と報告すると「だってウチの野菜が入ってるんだもん」とニヤリ。
先日は果物を買いに行きました。柿や梨、ブドウなどが店先に並んでいます。ピオーネの横に初めてみるブドウが。ぱっと見るとマスカットのようなのですが、よく見ると粒がでこぼこでいびつな形をしています。聞けば品種名が「瀬戸ジャイアンツ」という。野球チームみたいな名前だ。岡山の研究家がロシア原産のグザルカラ種とネオマスカット種を交配して開発されたものだそうです。
種なしで皮ごと食べられると言う。さっそく一粒試食させてもらうと、肉質がシャキとしていて舌ざわりが独特なのです。まるごと食べるので、果肉と皮との間にある甘みが品よく口中にひろがります。皮をむいて食べるブドウにはない微妙なうまさがありました。そういえば桃のシーズンの頃、ひろきさんは「皮ごと食べてごらん。皮の下のうまみがそのまま味わえるよ」と言っていたな。ざらっとした皮の感触はちょっと抵抗がありましたが、でも桃の甘みを今まで以上に味わうことができました。
店先でひろきさんと会話を楽しんでいると、何人もお客さんが立ち寄ります。「何かおいしいものない?」「新サトイモ、おいしいよ。きぬかつぎにしてもいいけど、イカと煮てもうまい。鰹節に砂糖、しょう油、味りん入れてさ。酒足して味を加減してごらん」と料理のアドバイス。うーん。これはスーパーじゃまず見られない光景だな。
この店の半径20m以内に2軒の大手スーパーがあるのにどっこい商売ができているのは、そうしたコミュニケーションがあるからなんでしょうね。店の前を「こんばんわー」と声をかけて通り過ぎていく人が少なからずいました。その日には買わなくても挨拶をしていくお客さんがいる。私は瀬戸ジャイアンツと梨、柿を買いました。「値段、サービスしといたからね」というひとこともうれしい八百屋さんです。
後藤 繁榮
ごとうしげよし